漬床の文化
 

こだわりその1   「漬床(つけどこ)の文化」

 

「漬物王国」とも称されるほどに、日本には発酵の技術を利用した多種多様な漬物があります。

このような漬物の伝統と文化は、地域ごと季節ごとに採れる様々な野菜と、それらを漬け込む「漬床」の豊かさによって育まれてきました。

漬物のはじまりは、海水を使用した「塩蔵」保存にあったと云われます。奈良時代以降、味噌に醤油、酒や酢など、発酵のしくみ利用した醸造の調味料が定着するのに伴い、それらを「漬床」として用いることで、地域ごとの特性も活かしながら、さまざまな漬物が作られるようになりました。

銀座若菜は、発酵の技術の下支えされた「漬床」の伝統と文化を見直して、また同時にそれを発展させながら、その時期に一番おいしい旬の野菜を、最も相性の良い「漬床」で漬け込んでいます。

 
 
  

【塩 床】


平安時代以前には漬物が「しおおし」と呼ばれていたように、塩は漬物の基本です。塩漬にされたものが長期間の保存に向いていることもあって、醤油漬でも粕漬でも、最初の漬け込み(下漬)に塩床が使われることが多いのです。また、塩漬によって、浸透圧の作用で食材からの離水が進み、逆に塩分が中に入り込むことで、漬物独特の歯切れが生まれます。さらに、押しと時間の作用で、乳酸菌や酵母菌が活性化し、風味も付加されます。


銀座若菜の塩床では、メキシコの海水塩を使用しています。これは海水を天日に干し、濃度を高めて結晶させる天然採塩法で採った自然の塩です。
海水に含まれている、人体に必要な74種類のミネラルがそのまま残っており、角のとれた旨味は、身体が自然に求める基本の味といえます。

主な商品:昆布白菜、白菜きざみ漬、しそ梅干、水茄子漬など

 

【糠 床】


現在のような形の糠漬が食べられるようになったのは江戸時代のこと。醗酵した漬床で漬けた糠漬には、整腸作用を促す植物性の乳酸菌をはじめ、酵母やビタミンB1が豊富に含まれており、栄養的にも大変すぐれた健康食です。

銀座若菜では、飛騨のもち米から取れる赤糠(お米の最も表面からとれる糠)を原料に、長期間醗酵させた種床をつくり、これを丁寧に熟成させながら、旬の野菜を漬け込んでいます。糠漬に特有の癖があまり感じられず、ほど良い酸味が食べ易いとご好評を頂いていおります。また、大根を長期間かけて糠床に漬け込んだ沢庵についても、伊勢三年沢庵や新漬沢庵をはじめ各種取り揃えております。

主な商品:ぬか漬・ぬか床セット、伊勢沢庵、天日干し沢庵

 

【糀 床】


糀にはタンパク質をアミノ酸に分解する酵素(プロテアーゼ)が多く含まれており、野菜を漬けると、まろやかな甘さと独特の旨味を付加します。
また、この酵素には、体内での消化吸収を助け、身体の免疫力を高めたり、美白効果があると云われ、あらためて注目されています。

糀床の漬物としては、東京名物でもある「べったら漬」や会津地方の三五八漬が有名です。銀座若菜では、もち米を糖化させた自家製の糀を、味噌や辛子等の他の調味料に加えることで、漬床をまろやかな味に仕上げる隠し味としても使っています。

主な商品:べったら漬、皮付べったら漬、ざくざく塩糀漬、華きゃべつ、なごり柿

 

【酢 床】


強い殺菌力を持つ酢には、食物を傷みにくくする働きがあります。酢床の漬物は、低塩度であっても日持ちがよくなり、同時に塩辛さが和らげられます。また、酢には疲労回復などの効果があるので、健康増進のお役にも立ちます。

銀座若菜では醸造酢にこだわり、合成酢は一切使用していません。基本となる純米酢をはじめ、青森産のリンゴ果汁から出来たリンゴ酢や、長野産のブドウ果汁からとったワイン酢、まろやかな酸味の玉葱酢など、それぞれの持ち味を生かしながら、漬け込む食材によって、使い分けたり、組み合せたりしています。

主な商品:サラダピクルス、柚子うらら、利尻昆布大根飛騨の赤かぶなど

 

【醤油床】


和食に欠かせない調味料である醤油は、大豆、小麦、米、食塩を原料に、麹菌、乳酸菌、酵母による複雑な発酵と熟成の過程を経て生成されます。醤油は、バランスの取れた深い味わいを持っており、300種類以上の香り成分を含んでいると云われます。「漬床」に醤油を用いることで、漬物に独特のコクと旨み、香りがもたらされます。

銀座若菜では、濃い口、うす口、白醤油から、たまり醤油や二度仕込み醤油まで、漬物の種類によって醤油の種類を使い分けています。深漬では、複数の醤油を使うことでより深い味わいに仕上げ、浅漬では、本みりんや純米酒、醸造酢などを合わせることで、すっきりとした味に仕上げています。

主な商品:江戸ごぼう江戸歌舞伎漬福神漬ざくざく醤油漬など

 

【味噌床】

 

伝統的な保存食である味噌は、赤味噌や白味噌をはじめ、その種類も全国各地で多岐にわたっています。味噌の「漬床」でじっくり漬け込むことによって、保存性が高まると同時に、食材と味噌の旨み・甘みが閉じ込められ、深い味わいがうまれます。

銀座若菜では、信州味噌や八丁味噌、伊予の麦味噌など、長期間熟成された味噌を厳選して使用しています。食材に合わせて、糀や粕、みりんを加えることで、まろやかな味噌床にしております。また、銀座本店では、全国各地から選りすぐった特選味噌も販売しております。

主な商品:江戸たまご、とうふ味噌漬、チーズ味噌漬、魚介味噌粕漬など

 

【粕 床】


平安時代、宮中の記録を綴った「延喜式」に汁糟を使った糟漬が記載されており、粕を使用した漬物は長い歴史を持っています。特に、清酒が普及した江戸時代以降は、酒粕を使った漬物が多くみられるようになりました。代表的なものが、奈良漬やわさび漬です。発酵した酒粕やみりん粕を「漬床」に用いることで、独特の風味と甘みをを持った漬物に仕上がります。

江戸時代に創業した料亭「得月楼」伝統製法を受け継いで、銀座若菜では、純米酒の酒粕とみりん粕の漬床でで奈良漬を漬けています。足掛け3年、合計5回の漬け返しを経て仕上がる奈良漬は、すっきりとした甘さと上品な香りが特徴です。

主な商品:得月楼みりん奈良漬各種、チーズ酒粕漬、魚介味噌粕漬

 

【砂糖床】

 

保存食品のジャムやコンポートがそうであるように、砂糖や蜂蜜を使って食材の糖度を高めることで、日持ちを長くすることができます。

ご飯のお供ではなくお茶請けや食後のデザートとして、銀座若菜では、果物を用いた砂糖床の漬物づくりに取り組んでいます。生のレモン果汁をたっぷり使った「梅コンポート」に、澤田酒造の日本酒「白老」を使ったイチジクのコンポート「甘露無花果」。今後は、新たな商品も登場する予定です。

主な商品:梅コンポート、甘露無花果